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期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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1ヶ月ぶりに小説更新です。
…、8月は2,3回更新できればいいですね←
いつものPCで更新作業をしていないので違和感あったり。

早くあの人達と会わせたいがためにお粗末な表現があったりすると思います…。
変だと思ったら批評もびしばししてやって下さって構いません。
うーん文章書くって難しい!誰か文才を…!!

 
 
 
 *
 
 
 
 
三人は急いで朝食を済ませた後、町に繰り出した。
火事や病院騒動で騒がしかったのが嘘のようにしんとしている。
きょろきょろと周りを見渡してみても、人一人歩いていない。

 
「皆…ツバキさん達みたいに、眠ったままなのかな…」
 
「全員がそうとは限らないよ、ボクみたいな人もいるかもしれないしっ」
 
「でもリっくんは……。
ええと、確かにそうだよね!」

 
まだ、起きてる人もいるかもしれないよね、とカシに確認するようにナズナは言った。

 
「……」

 
町の中央にさしかかった所で、カシはぴたりと歩くのを止めてナズナとリコリスをじっと眺めた。
まずい、これはもしかして『視られている』んじゃ、とナズナがはっとしたときにカシは口を開いた。

 
「何かさ、隠してるよね」
 
「今……勝手に見透かした?」
 
「いや。
きみに対しては抱きつかれたあの日以来してないよ」
 
「そ……って、ああああれは違うんだよ!?
というかもっと違う言い方できないの!?
あれは、その、えーと」

 
カシとリコリスと、恐らく自分に対しても弁解しているのだろう。
内心焦りまくりのナズナをよそに、カシはぼそっと何かを口にした。

 
「カシ兄ちゃん、何か言った?」
 
「…、あの店の近くに止まってるパトカーの中に、人がいないかなって」
 
「え?パトカー?」

 
急な話の飛びように、リコリスはきょとんとせざるを得ない。
町の中央という激戦区にはふさわしくない、小さな商店の側、カシの目線の先には確かにパトカーは止められていた。
ナズナとカシを置いて、リコリスはぱたぱたっと駆け寄ってみる。
窓の横に来るなり、あっとリコリスは声を上げた。

 
「カシ兄ちゃん、ナズナ姉ちゃんっ、警察の人いる!」
 
「えっ!?」

 
リコリスの台詞に驚いたナズナはちらっとカシの眼を見やって――実は期待してなかった、というようなカシと顔を見合わせて、二人して急いで駆け寄った。

 
窓が中途半端に開いた車の中の人物を見て、カシだけは目を見開いた。
一昨日、リコリスを探している時に出会った警察官その人じゃないか。
あの時よりも、顔がえらくやつれている気がする。

 
「この人、寝てるだけ?」
 
「分からないけど…この人、ツバキさん達よりもずっと顔色が悪いみたい…」

 
意を決して、ナズナはすみません!と窓を叩いてみた。
が、ツバキ達同様目は覚まさない。
ドアを開けようにもロックが掛かっていて開かなかった。

 
「窓がもう少し開いてれば開けられるのに…っ」
 
「呼びかけてる時点で起きないんだ、開けても意味無いんじゃないか?」

 
でもさ…と惜しいようにナズナは呟いた。

 
「関係ないけど、この人ヘビースモーカーかな?」

 
車内の灰皿に吸殻がいくつも散らかしてあるのが分かり、警察官の左手には金色に光る四角いものが握られていた。
蓋の部分に英字のロゴが施されている。

 
「タバコ好きな人ではあると思う、一昨日この人を見かけたんだけど、其処でもタバコ吸おうとしてたし」
 
「ふぅん、そうだったんだ。
でも、ライター持ったまま寝るなんて――それにしてもなんだか高価そうなライター……えっと、ファナ…」

 
続きは親指が邪魔してて見えない、と奇妙な所に注目するナズナに、カシはふぅ、と溜息をついた。

 
――ライター持ったまま……。

 
タバコを吸おうとしていたのか吸い終わった後なのか。
何れにせよそのまま寝落ちってありえるのだろうか、とカシは一人考えた。
昨日の件と繋げるならば、というよりカシの考えでは……仮説ではあるが、ツバキ達は寝ているうちに意識不明に陥ったとするなら、
この警察官は昨日のイチョウや他の町の人と同じ何かの最中、この警察官ならばタバコを吸おうとしたときに意識を失った、と考えればよいだろうか。
ぐしゃり、とカシは頭を掻いた。

 
――今、何が起こってる?



 
『知りたいわよね』



 
「…っ!?」

 
内側に響いた、一昨日聞いたのと同じ声に、カシは色んな方向に目をやった。
一昨日は人が多かったのに対し、今日は人一人いない。
目を見開いているカシに、ナズナはどうかした?と声をかける。

 
ひゅおう、と強い風が3人の側を吹き抜けていった。
一昨日と似たような臭いを含みながら。
それは3人の鼻につんと少しの刺激を確実に与えた。

 
「ねぇ、この臭い…」
 
「……、そんな、まさか……」

 
ざわり、とパトカーのタイヤの近くで揺れた赤い花に二人は目を落とした。
一昨日とは違って静かな町。
二度目の災難。

 
「野原だ、多分」

 
警察官から目を逸らし、中央から北に続く道をじっとリコリスは見つめていた。
こっちの方角から吹いてきた、よね?と二人に確認するため、くるりと振り返った。

 
『もう坊やは時期に分かるわ』

 
またあの声。

 
『ああ、可哀相な人形によって賽は投げられた…』

 
何処にも声の人物らしき人が見当たらない変わりに、何故だか、カシはじっとリコリスの赤い目を見据えていた。
その赤い目にはちらちらと静かな怒りが湛えられているような、そんな気がした。
二人は三つ編みを揺らしてリコリスの後をついていく――。
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自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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