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期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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仮死が完結したのは9月…+αどれだけ更新するの遅いんですかって話ですorz
昨日夜10時~3時ぐらいで書きました←
昔と比べて詩物語の質は衰えたような変わらないような?
お人形さんは「仮死」と関わっていますが、
4作品の中でこれが一番関わっていますね。名前出てますし。
詩よりも物語に近いと思われます。
エピローグ…其の40の続きだと思って頂ければ幸い。

「仮死」を読んでいなくても普通の詩物語として楽しめる、というのが
お人形さんのコンセプト(だったのか)だったんですが
これは…守れてないような…すみません(´・ω・`)


長い間「仮死」を見守って頂き本当にありがとうございました。
では追記より。
…どうでもいいけど、一番目の歌だけ高3の時に用意しておいた歌なんだ←



キイ、と大聖堂への扉が音を立てる。
ひとりでに開くことのないその扉を不審に思い、青年は歩を進めた。
この扉はノブを捻らなければ開かない。
年数は随分と立っているが、それでも風で開くなんてことは一度も無かった。
段上の長椅子の間を通り、扉の、入り口には――誰も居ない。


「どこを見ているの」


青年はその声に驚くことも無く、振り返った。


「きみから来てくれるとはね」


青年の視線の先には、赤い着物を纏った女性が、一番手前の長椅子に座り込んでいた。


「わたしはあなたの思い通りには動かないのよ」

「昔からそうだった」


青年も赤い着物の女性の隣に座り込んだ。


「ねえ」


女性は青年に近づいて口を開いた。


「あなたの目にわたしは、どう映っているの」


青年は答えた。


「綺麗になったね」


笑むことはなく。


「……消えてしまうのが惜しいくらいに」


女性は笑った。
あなたにとってそれは嬉しいことだろうに、と。
女性は言った。
わたしの力が途絶えれば、あなたは死ぬのよ、と。
女性は言い続けた。
だからわたしを恨みなさい。
罵りなさい。
先に消える私を哂いなさい。
何も、誰の願いも叶えられなかった私を哂いなさい。
青年は言った。


「とうに昔から恨んでいたよ」


恨みはらしにそうだね、と青年は考える。


「きみの好きな歌を聞かせてくれないか――ヒガン」


そのあとで思い切り哂ってやるから。
赤い着物の女性はそっと声をふるわせる。

 

 

 

 


♪♪♪♪♪♪♪...

いらっしゃい 美しい踊り子がスカァトをはためかせて舞い艶(あで)る
みぃんなくぎづけ 拍手喝采雨あられ!
踊り子は愛らしく笑む それは魅惑の鎖 つかまらない者は誰もいないわ
疎む人もありき 恨み僻みそして羨望のいばらみち!
笑みを好く者忌む者 とらわれ者はどこへ行く
踊り子を殺すの? 守るの? 赤い空赤い花に舞台は見守られる
これはなんて題名(タイトル)の人形劇 入場料はいくら
踊り子はただ目の前の人間を幸せにしてあげたかっただけなのに
台風の中心でお人形を動かしているだけなんて
自らが踊ることもできないなんて
皮肉な話ね

 

 

♪♪♪♪♪♪...

「大きければもっと構ってあげるんだけどね」
それは少女の修羅を燃やしたことば
初めての奇跡を足蹴にされたことば
「多くの女性、そしてきみはどんな綺麗な女性になるか知れないのだから」
それは少女の心が揺れ動いたことば
青年に奇跡を施さんとしたことば
にんげんとわたし 青年と少女 正統と異端 
少女の皮をかぶった化け物 ことば一つで彼に興味をもちて
多くのにんげんを好いている化け物 彼だけに固執せり
どうして 問いは宙に溶けるのみ
誰も答えてはくれない

 

 

♪♪♪♪♪...

わきあがるこの音 気持ちはなんでしょう
小さなホールで棒を振る彼はまるでマジシャン
マジシャンの奏でる音 真似してみましょう
ら らら Lala る ララララ I wish ルル
音叉の響きに声を重ねて 少女の声は響き渡るわ
言の葉を一つずつ紡いで マジシャンにありがとうを伝えましょう
「わたしに歌を教えてくれてありがとう」と
鈴が転がったような声音にのせて
ありがとうありがとう
あなたの記憶回路 わたしの催眠術
こうかんこも受け入れてくれて
歌を歌いながら 少女は今日もにんげんに近づいてゆくわ
きっと

 

 

♪♪♪♪...

異国のおはなし きかせてあげる
あるところにそれは可愛い女の子がおりました
容姿端麗お金持ち 噂は広くとどいておりました
人気者の女の子 けれど独りぼっちの女の子
みぃんな彼女のうわべだけに取りつかれているの
誰も彼女の心に触れません 可哀想な女の子
女の子は親の取り決めで婚約がきまりました
高潔な大会社の御曹司 燃える赤髪氷の瞳
彼の親も彼もうわべだけに取りつかれているわ
女の子は独りぼっち ではありませんでした
御曹司も独りぼっち 女の子は気付いたのです
女の子は御曹司に寄り添いました
私たちは二人ぼっち
誰の理解も もういらない

 

 

♪♪♪...

移りにけりないたずらに
とある唄うたいの女の子 ゆくあてもなくのどをふるわせて
聞き手はだぁれもいないのに 
少女の唄は死に唄 誰にも届かず誰にも響かない
移りにけりないたずらに
とある唄うたいの女の子 泣き虫少年に声かける
今までだぁれも答えてくれなかったのに
少年は泣きながら返事をした
少女は陰で嬉しがる
彼の心に響いておくれ 希望の唄
少女の唄は慰みの唄
少年に三度 内よりそっと響かせて

 

 

♪♪...

荒野に赤バラを手向けましょう 1本2本
荒野を真っ赤に埋め尽くしましょう 私の好きな色染め上げて
赤い野原に人を送りましょう 1人2人
赤い野原をより賑やかしましょう 寂しい気持ち吹き飛ばして
そこの独りぼっちの少年も来なさいな 誰もが満たされる私の国
私だけはずっと荒野に置いてけぼりなのだけど
独りぼっちの少年はこわごわ口を開く
一緒に行こう ボクと荒野を出よう?
きみが好きなきみの国
ボクはきみと見てみたい
私は独りぼっちの少年の手を取った わたしが好きな私の国へ
わたしが好きな 好きな 好きな 好きな?
好き なんて気持ち 真面目に考えたことあったかな

 

 

♪...

問いを拾ってくれたのは誰?
螺旋をほどいてくれたのはあなた?
好きという気持ちを教えてくれたのはきみ?
台風を晴らしてくれたのは神様?
哀れな人形繰り師に さんさんと光降り注ぎ
終了10分前 さあさあクライマックスよ
駆け足で終わってしまうわ 集中しましょ
シェファーズパースはプラスの道を歩き始めたみたい
ラディッシュフラワーもまた納得のエンディングを
カンフォーツリーはらしくあり
ドロップウォートは光を見出し
ペパーミントは確実に善い方向へ
人形劇が進むにつれてもっと沢山のお人形がドラマを紡いだ
人形繰り師 元踊り子の手から離れてお人形は舞う 舞う
さあフィニッシュ! オークが中央で礼をする
まるで全力で踊ったよう 踊り子は汗を光らせて礼をした
入場料はいりません
わたしは皆を幸せにしたかっただけだから
チリンチリン 人形劇の終幕のベルが鳴る
鑑賞ありがとうございました と

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「踊り子はまた人形劇をやったのかな」


青年の問いにヒガンはいいえ、と答えた。


「彼女は人目につかないところで独り死んでしまうの」

「わたしだったら死なせないがね」


少なくとも独りでは、と青年は言った。


「悲しいラストだって哂えばいいわ」


言って女性は青年の顔に気が付いた。


「ああ、もうお別れみたいね」


女性の髪、そして着物の輪郭がぼんやりと光っていた。
赤い粒子がぽろぽろと落ちていく。
わたしはもうこの世にとどまっていられないみたい。
力を奪ってもただの悪あがきにすぎなかった。
人間にもなれず、色んな人を不幸にしただけで、無様だわ。
赤い粒子が頬を伝う。
せっかく、昔より仲間の増えたあなたを延命させることも難しいの。
わたしがあなたに執着していた理由は苛立っただけじゃないのよ。
でもその他の理由が分からなかった。
だからあなたをわたしと一緒に ずっと生きながらえさせて答えを探していたの。
青年は答えた。


「わたしは十分生きたよ」


それが意図した生でなくても、もう十分。


「ヒガンに対して色々思うことはあるけれど。
女の子を独りにさせるのは紳士じゃないからね」


今、わたしと共に逝くことは可能なのかな。
ヒガンは驚いた。
そして笑った。
赤い粒子をぼろぼろ零して。


「あなたは人。
わたしは化け物。
共に逝くことはできないわ……あなたは私が殺した女性達の元へ行くけれど、わたしは何処へ行くのかしらね……」

「わたしも化け物さ。
長い年月を生きて、少しばかりきみの力も持っているのだから」


青年は小指を差し出して微笑んだ。
外れ者同士指きりをしようか。
きみの元に私が行けなかったら恨め。
ヒガンはそっと小指を絡めた。

 

 

 

 


「――ありがとう、ビロウ」

 

 

 

 


静かな聖堂の中ビロウは長椅子に寝そべった。


「最期のきみは人間らしかったよ」


わたしを思ってくれてありがとう、ヒガン。
ビロウはゆっくりと瞼を閉じる。
彼女の元へ行けることを願って。

 

 

 

 


♪~

それは小さな恋の歌
心は交換こした覚えがないのにどうやら
化け物にも心はあるらしいわ
教わって作ったチーズケーキ ひっそり台所を借りて作ったから
どうかその生を終える前に 覗いて欲しい
まるで人間の女の子みたい だけれど私は化け物
わたしはは化け物だけれど
言われたって困るだろうから言わずに逝くわ
あなたに恋焦がれていたの きっと ずっと
人間を幸せにはできなかったわたし
恋なんてものを抱く資格はないけれど
答えの見つかったわたし
それは小さな幸せの歌
誰にも届かないけれど死に歌ではないの
わたしのため わたしだけの歌

 

Fin.


 

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無題
完結おめでとうございます…!!
目頭が熱くなりました、うああ…泣けます;;
登場人物たちのそれぞれの物語が一つにまとまってクライマックスの盛り上がりが…!!!
素敵な切ない物語をありがとうございました!!!
仮死大好きです…!!ストーリーもキャラもみんな大好きだああああ!!!!
文章がうまくまとまりませんが、これからもずっと柊さんのファンですv
夏草 2010/12/31(Fri)20:50:57 編集
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柊葉
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自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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