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期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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過去に部誌に載せた物語ですが。
昔の作品発掘してないで本編載せろって話ですがorz

3月終わりまで暫しお待ちを。

あるお話の中の『お話』
 
あら、いらっしゃい!
こんな辺境の廃れた図書館へようこそ、町から随分歩いたんじゃない?
…え、お客に対してそんな口調でいいのかって?
いいのよ、だって私嬉しいんだもの、久しぶりに本を借りに来る人が来たから。
そう、月日で言えば六ヶ月と十二日。
でもあなた運がいいわね、明日この図書館を閉鎖するつもりだったんだから。
だから借りたい本があったら貰っていっていいわ…ってあなた、私の話無視してるでしょう。
あ、その手に取った本は…。



§§§§§§§



 
その女、笹目悠希は沢山ある色の中で白色が大好きだった。
穢れの無い無垢な赤ん坊のようだと、悠希にとって時折その色は眩しく感じられた。
悠希は十数年しかこの世界に生きていないのに、すでに世界に嫌悪していた。
空海雲森炎空気。
命の輝き。
素敵なものは沢山ありふれている。
悠希は今まで何度もそれらに微笑んでいる。
ただ、それは過去の話。
悠希が微笑むことは乏しくなっていた。
悠希はいつの頃からか「人間」を嫌いになっていった。
離婚した両親、上辺だけの付き合いの者、お金を騙し取ろうとする者、エトセトラ。
そして自分自身。
悠希は自分が「人間」であるにも関わらず「人間」としての上手い生き方が分からなくなった。
ああ、汚れているくすんでいるもうどうすればいいか分からない…。
それは悠希の頭と心をじくじくと追い詰める。
 
ある日、悠希は誰にも何も告げずに姿を消した。
いつもの女の子らしい格好ではなく、真っ白い装束に身を包んで。
フードから流れる黒い長髪はつやつやとしていた。
大好きな白色が私をどうにかしてくれるんじゃないかって。
街を歩く人が奇異の目で見ても悠希は気にしなかった。
ただ一人、ある人を除いて。
 
悠希の目の前に、対照的な黒装束を羽織る男がいた。
二人は暫く相手を観察し、まず男が口を開いた。
お前、なんて名前だよ、と。
悠希はこう答えた。
 
「…私は白フード」
 
二人の間に沈黙が流れた。



§§§§§§§



 
あなたってファンタジー系統が好きなのね。
…馬鹿にしてる、ってそんな、馬鹿になんかしてないわよ!
あなたを馬鹿にしたら私まで馬鹿だって肯定しちゃうじゃない。
何? なんでそんな変な目で私を見てるの?
別に、ですか、ふうん。
…あなた、その本貰ってっていいわ。
ついでにもう一つ、それの別視点の本があるんだけど、読みたいなら…そうそれ、その薄い黒い表紙の本よ。



§§§§§§§



 
その男、(あい)()霧はピアスやネックレスを好む、今時の若者であった。
ただ、周りが赤や金に髪の色を変えても霧だけは黒で通した。
ぱっとしないと言われても彼は黒であることを止めない。
霧は数ある色の中で黒色が大好きだった。
全てを飲み込み無に還す、ぞくりとするその強さが霧には感じられるのだ。
 
霧は十数年間しかこの世界に生きていないのに、すでに世界に愛想をつかしていた。
怒り蔑み裏切り裏切り裏切り裏切り…。
信じていたモノが突然手のひらを返す。
霧は特別それを恐怖していた。
どうして何故俺がいつ何をした!
彼の身に遭ったことは闇の中。
はっきりと分かることは外見の割りに彼はとても脆いこと。
 
ある日、霧は誰にも何も伝えずに姿を消した。
いつもの都会の若者らしい格好ではなく、真っ黒い装束に身を包んで。
黒い短髪がその装束に溶け込んでいた。
大好きな黒色が俺を消してくれるんじゃないかって。
有り得ない妄想にしがみついて不思議な格好で霧はふらふら歩き続けた。
街を歩く人の目なんて気にしない。
勿論彼らにも興味は無かった。
ただ一人、ある人を除いて。
 
霧の目の前に、対照的な白装束を羽織る女がいた。
俺の他にもこんなヤツがいるのかよ、と思って霧はその女に名前を聞いた。
 
…白フード、確かにそう名乗った。
コイツはふざけているのか、あるいは「自分」を捨てたのか。
沈黙の後、白フードが貴方は誰?と問う。
霧はこう答えた。
 
「黒フード。お前の真似じゃないからな!」



§§§§§§§



 
翌日、その建物は他の人の手へと渡りましたとさ。

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自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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