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期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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カシ幼少期

泣き腫らした目を優しく見つめるは……。



新年度の始まりは小説で始まります。
短大は明後日から始まります…orz
エイプリルフールなので幼少期の彼を描いてみた。
…これだと小説じゃなくて「お人形さん」の更新した方がいいような気がしますね(笑

もうストックが1Pしかねーぜ!ぎゃあ!書かなすぎた!orz
あの人がやってきたらしいですよ。

 
 
 
 
 
ナズナ達にとってこの町二日目の夜。
昨日程賑やかでない夕食、風呂を済ませた後にカシを除く三人はイチョウをふすまで隔てた和室の部屋で、今日何度したか分からない話をしていた。

 
「二人は、明日は病院に空き部屋できると思う?」
 
「お爺ちゃんだってまだ目が覚めんし、明日も変わらんと思う。
お医者さんもまた明日診に来てくれる言ぅとったし、家におった方が尽きっきりで看病できるからうちはこれでええかなぁ…」
 
「私も、明日部屋が空くのは難しいと思う。
でもお爺さんの怪我が酷くなくて良かったよね」

 
ふすまの向こうで静かに寝ているイチョウを見据えてナズナは喋った。
ツバキが家を出た二十分後に救急車が到着したのだが、
この町の病院は規模が大きくないのと今日になって運び込まれた人が多かったのとで部屋が無いことを告げられ、
イチョウの自宅で診察が始まったのだった。
結果、意識を失ってから花壇に頭を打ったことが分かり、出血による脳への異常も無いと知らされた次第だ。

 
「お店には連絡したから、明日はうちもずっと家におるよ。
ナズっちゃん達は人探しにだけ集中してくれてええからね?
うちったら自分ばっかりで本当申し訳ないんやけど…」
 
「いや、そんな!ツバキさんには凄い感謝してるんだから!」
 
「ナズナ姉ちゃんっ、明日も手伝ってやるよ。
ていうか、ツバキ姉ちゃん一日で呼び方ころころ変えすぎじゃないの?
外の人には標準語っていうポリシーは?」

 
前から、ツバキは他所の人の前では訛りを押さえて喋るのをリコリスは知っている。
リコリスが標準語なのは養子だからだろうか、とナズナは考えた。

 
「気にせんといてよ。
それからリっくん、言葉直さんと、手伝ってやるんやなくて手伝いますやろ?」
 
「敬語ってなんか、やだ」

 
やだ、やないの!と一喝するツバキにリコリスはびくっと体を震わせた。

 
「ツバキさん、かしこまった場所でもないから敬語とか別に…」
 
「そう?ナズっちゃんがそう言うんなら…。
あ、ちょっと気になったんやけど」

 
ナズっちゃんうちにはさん付けやけど、と話し出すツバキに、なんとなくナズナは展開が読めた。

 
「カシさんのことは呼び捨てよね。
…ああ!ビロウのことも呼び捨てよね、うちも敬称略なのは置いといて。
ナズっちゃんってどのくらいビロウと親しいの?」

 
がく、とナズナは内心拍子抜けした。
カシのことを聞かれるかと思っていたがツバキはビロウに興味があるのだ、忘れてはいけない。
…いや、忘れてもいいか。

 
「一昨日初めて会ったばっかりだし、人探しの手がかりを貰っただけだから…」

 
だからそんなに親しくないよ、とナズナは端的にまとめた。
じぃっとツバキはナズナの顔を見つめている。

 
「…ナズっちゃん、親しいかはともかくとして、まだビロウについて色々知っとるよね?
うち、全部聞きたいなぁ」
 
「え、知ってるってなんで分かるの?」
 
「ナズっちゃんってうちがビロウのこと言うと顔が強張るんよ、だから、何かあったのかなぁて」

 
ふわふわの黒髪を揺らしてツバキはにこっと笑った。

 
「えっと…。
ビロウってね、女の人が大好きみたい…なんだよね」

 
大好きみたい、ではなく実際大好きなのだが。
あの時のことを思い出しながら、ナズナはううんと唸りながら喋り出す。

 
「ツバキさん達にも頼んだ女の子の情報を聞き出すために、チーズケーキを作ってあげたんだけどね。
その時に」
 
「言い寄られたん?」

 
ツバキはやたらうきうきしながら聞き入っていた。

 
「違う、私今まで会った女性の中で一番普通だって言われたの…!
だって今までって、百何十年の中で、ってことになるんだよ。
あの時は咄嗟にへらで殴っちゃってすぐ謝ったけれど、今思えば私謝らなくても良かったんじゃないかな…」
 
「いやいや物理攻撃はあかんよナズっちゃん。
普通もいい事だと、うちは思うけどなぁ」

 
しかしナズっちゃんおもろいねぇ。
笑顔で言うツバキに私には面白くないことだったんだからと困り顔で返した。
完全に二人の世界になってしまったので、リコリスは遠く玄関の戸を叩く音を聞いて立ち上がる。

 
「誰か来たみたいだから、ボク出る」
 
「うん、リっくんありがとう」

 
リコリスの後ろ姿を見やってから、ツバキはまたナズナの顔を楽しそうに見た。

 
「ナズっちゃんが普通なら、うちもきっと普通って言われてしまうんやろなぁ。
でも面と向かって言われるのもそれはそれでいいかも。
ビロウの顔が見れるんなら」
 
「え、ツバキさんは私以上だよ、でもツバキさんって本当にビロウに会いたいんだね?」

 
まあね、と言うツバキは少しだけ顔を赤らめたように思えた。
本当に好きなのか、単にビロウを面白がっているのか、ナズナには判断が難しい。

 
「ビロウも此処に来ますよ。
ワタシは原付きで此方に来たので何処かで抜かしてしまったようですが」

 
急に割り入ってきた声に、ナズナとツバキは急いで振り向いた。
其処には前髪を真ん中分けにした白衣の男と、斜め後ろにリコリスが立っていた。
 
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女性
自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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