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期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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町の人の言葉も変えれば良かったなーという。矛盾その1。
本当は今回みたく喋らせる気はなかったんだけど51P目であの子勝手に
喋っちゃったからもうここから修正することに。
何弁、と訊かれたら柊弁と答えますよ、もう知らない!

本日2回目の更新。

 
 
 
 
 
 
 
 
「あと十五分…。誰かリっくん見つけたかな…」
町の東側を探していたツバキは、汗を流して腕時計の時間を確認した。公園、スーパー、ゲームセンターなどもう色んな場所を回りつくした。他に探していない場所はないかと考えてみる。
「町外れの野原……」
前に、イチョウとリコリスと、今は亡き両親とでピクニックに行ったことのあるその場所を思い出す。赤いハルジオン、赤いオオイヌノフグリ、赤いシロツメクサ――それはシロツメクサと言えるのか――が咲き誇っていたその場所は、町の何処よりも赤い花に満ちていた。今、その場所はどうなっているのだろう。ツバキはその場所に向かって走っていった。リコリスが其処にいればいいと願って。
 
 
 
 
 野原は文字通り焼け野原だった。消防車の放水によって地面はじっとりと湿っている。赤い花は一つも残っておらず、全て真っ黒く、花の形も残っていなかった。
「リっくん!いたら返事しぃ!」
クシュ、と草花の跡を踏みながらツバキはリコリスに素の訛りで呼びかけた。返事は無い。平面的な野原に全く人影は見当たらなくて、それでもツバキは歩き、呼びかけ続けた。遠くばかり見ていたのでツバキは足元に注意するのを忘れてしまう。
 ずっ
「きゃあ!」
そうだ、この辺りは斜面になっていた、とツバキは思い出したが遅かった。湿っている所為で滑りやすくなっており、ツバキは尻餅をついてしまった。
「最悪…。こんな時に服汚しちゃうなんて…」
黒い炭をパンパン払ってツバキは苦い顔をして立ち上がった。
「…コ…ス…」
「っ!」
ツバキの耳に、誰かの声が届いた。必死で見回すと、ずっと左側に位置した川の傍に人影を発見した。
「遂に死んじゃった…。さようなら…」
川の傍に座り込んでいた人影、もとい栗色の髪の男の子は水面を見つめてふっと微笑んだ。
「キミに〝ボク〟は応えられなかったけど…でもちょっとは分かったかな、〝好き〟っていう感情」
「リっくん!探したんよ!!」
男の子が振り向くと、ツバキが息を弾ませていた。男の子は不思議な顔でツバキを見た。
「どうしたの?ツバキ姉ちゃん」
「どうしたの、じゃあらへん!お爺ちゃんも他の友達もみんなリっくんのこと探しとったんやから!」
潤んで言い立てるツバキに男の子――リコリスは驚いて、ごめんなさいと小さくなって謝った。傍目に服は汚れていたが元気そうなリコリスにツバキは内心ほっとして、
「…、じゃ、皆のところに戻ろう?元気だってこと報告せんとね」
とリコリスに手を差し出すと、リコリスはツバキの手を掴もうとして――さっと引いた。ツバキは不思議に思う。
「どうしたん?」
「ボクもう小四だし、元気だし、手ぇ繋がなくても大丈夫だよ」
そう?とツバキも手を引っ込めて、二人は並んで歩き出した。クシュ、と変な足音を立てながら。
「そういやリっくん、独り言喋っとったよね?」
「あ、うん。お爺とか皆平気かなって」
ふうん、とツバキは訝しく思ったが気にしないことにした。リコリスの顔はいつもと変わらない。川には、一つ残らず焼けてしまったはずの赤い花――彼岸花が流されていたのには、ツバキは気がつかなかった。
 
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HN:
柊葉
性別:
女性
自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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