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期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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最初のまとまりが短いから2つ目もくっつけてみたところ
今度は長くなってしまいましたが気にしないで頂けると幸い。

 
 
 
 
 
 町の中央ではパトカーが何台か赤いサイレンを光らせていた。その一台の中にいた警察官は腕組みをして考え事をしている。と、コンコンとその警察官の近くの窓ガラスを叩く別の警察官がやってきた。中にいた警察官はガラスをスライドさせる。
 ウィィィン
「どうした?」
「大火事の原因が分かりましたよ、先輩は休憩中でしたか…?」
「それもあるが、色々考えててな。で、その原因の報告をしてみろ」
「はい。火元はこの町の至る所かと。町の至る所に何か燃えカスみたいなものが落ちていまして…鑑識に回した結果、それらは全て異国製のマッチだと分かりました」
なるほどな、と中の警察官は眉間に皺を寄せて考え込む。
「人の仕業だってのはこれではっきりした。しかし…そのマッチだけじゃ、犯人を特定するには不十分だな。今の世の中異国も本国もないくらい人が交わっているし、おれだって最近異国にかぶれてる」
「あ、先輩確か『ファナリエッタ』のライター使ってましたよね」
「まあな。それはいいとして、他に何かないのか?」
「ええと…燃えていた箇所っていうのが、赤い花の咲いている場所だったようです。花壇と町外れにある野原が特に被害が大きかったようで…」
「花嫌いによる犯行ってことか。なんだか馬鹿げてるな」
それともう一つ、子供の証言なのと事件に関係あるのかどうか分からないことなんですが、と外の警察官が悩ましく言うと中の警察官は構わない、と促した。
「火事で町がどんな風になってるのかすぐ近くの丘に登ってみようとした子供によると」
「ああ、そのガキの気持ちおれ分かるかも」
「先輩……。ええと、その子供によると、丘には先客がいたようです。黒髪に長い黒コートの男がいた、と。でもすぐに見失ったようです」
「怪しいな、そいつ。…でもまだ情報が少ないな…、おれもそろそろ捜査に戻るとするか」
がちゃんといきなりドアを開けたので、外の警察官は危うくぶつかりそうになった。人のざわめきが車内にいたときよりも一層多く警察官の耳に届く。警察官はふと空を見上げると、少しだけ青空を見せた空も、いつの間にかまた曇っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「ツバキちゃん、それと観光の人達!もうココはいいよ」
「え?休憩から戻ってまだちょっとしか経ってないんだけど?」
ナズナ達の元に駆け足でやってきた人物は、ふぅと呼吸を整えていた。
 三人は入り口のすぐ傍のファミリーレストランで、かき氷や水、更に保冷剤等の提供を手伝っていた。全て無料で町民に振舞っている。火事が鎮火して四時間程経った今もそれらのサービスは喜ばれていた。ナズナとツバキは客席に出向いていったりもしたが、カシはずっと裏で濡れタオルを絞ったりしている。
『俺の『欠ケモノ』としての性質上、客席に行ったって誰にも気づかれないから裏にずっといるよ』
『でもカシが声かければそれって関係無いんでしょ?』
『そうしたところで、町の人は俺の格好と髪を変な目で 見るのは目に見えてるから』
『ツバキさんは違ったじゃない。格好は、ほら、ここレストランなんだし、ウェイターの格好でもすればいいんじゃないかな…。な、なかなか似合うと思うんだけど…』
ぎゅーっとカシはタオルの水滴を切った。少し前の会話で、ナズナの提案ににこっと微笑んで却下の一声を出したのを思い出す。
――着替えるの、面倒なんだよね。
それにしても暑い。火事の後に加えて裏、つまり厨房には冷房がついていないので尚暑い。更にカシは首から足まで薄墨の装束、その上に黒装束を纏っているのでやたら暑苦しい。暑いのは当たり前である。フードをとって腕まくりをしてもそんなに変わらない。
「カシー、ツバキさんが…って、ねぇ、それ町の人に出す濡れタオルじゃなかったっけ…」
「……。暑かったからね」
ナズナがカシを呼びに厨房に行ってみると、白髪の頭の上に濡れタオルを乗せたカシが目に入る。
――暑いんならまずその格好どうにかすればいいのにっ!?
「まだタオルはあるから問題無いよ」
「…えっとね、私達ココはもういいみたい。お店の人達ありがとうって言ってたよ」
「…、さっき、きみの言いかけたことって何?」
「そう!ツバキさんが大変というか、ツバキさんの身内の人?が大変らしいの。詳しい事情はよく知らされてないんだけど」
へぇ、と言ってカシは頭の上の濡れタオルを取って一回洗い、すぐ外の物干し竿に掛けてからナズナと共にレストランの外で待機しているツバキの元に向かった。知らなくていい話だが、カシの使った濡れタオルは曇りにも関わらず一時間経つか経たないかのうちに乾いたらしい。
 レストランの外に出ると、ツバキと見知らぬ老人が話し込んでいた。老人の方は酷く心配そうな顔をしている。ナズナとカシがやって来たのに気づいたツバキは手を振った。
「ナズナさんとカシさん!お手伝いありがとうね。その延長で悪いんだけれど…」
「ツバキから聞いたよ、外から来たんだって?いきなりで悪いんだがお嬢ちゃん、町の近くで十歳ぐらいの男の子を見かけなかったかな」
「男の子…?カシは見かけた?」
「いや、昨日新作のお菓子を買った街を出て以来、子供は見かけていないと思う」
この町に入ってからは何人か見かけたけれど、と話すカシの存在に今気付き内心驚いて、
「お嬢…お兄ちゃん?はその見かけた子供の中に栗色の短い髪の子はいたかい!?いたと言ってくれ!あの子はまだ生きてるんだ!!」
と老人はカシに縋るように言った。二人が戸惑っていると、ツバキが老人に落ち着いてと優しく手を握った。
「リっくんはまだ生きてるよお爺ちゃん。うちも探すから、カシさんを困らせないでよ」
「もしかして…もしかしなくても、この方はツバキさんのお爺さんね?」
落ち込んでいた白髪の老人は、ナズナの言葉に反応した。
「そうだよ…。わしはツバキの祖父のイチョウだ。茶髪のお嬢ちゃんがナズナさんで、白髪のお兄ちゃんがカシくんだね?」
ぺこ、と軽く頭を下げて二人は礼をした。イチョウはまずカシにすまないね、と謝った。
「わしの孫が朝からいないんだ…。煙にむせて起きたら、花壇は燃えているし町は大騒ぎときたもんだ。ツバキのところに行ったんじゃないかと思えばツバキも家にいなくて」
「うちは一人暮らししてるの。あと、お爺ちゃんの孫のリっくんはうちの本当の弟じゃなくて養子なのよ」
ツバキがタイミングを見計らって説明を入れた。
「ツバキが働いているお店に来たら、ツバキが生きていたんで安心したんだがやっぱり孫の…リコリスがいない。あの子は体が…気管支が弱いんだ…。今、この火事で死んでしまうのはあまりにも可哀相すぎる!」
目に涙を浮かべてイチョウは声を振り絞った。皺の刻まれたその悲しそうな顔を見て、ツバキは二人に言う。
「二人とも、お願い。うちと一緒にリっくんを探して欲しいの…。大火傷なんてしていたらと思うと…それに最悪の事態を考えると…。何より姉として家族として、とても心配なの。ナズナさんとカシさんの言う女の子も一緒に探すから…!」
「そんな、私達のことは気にしないで。それなら早く探しましょう、リコリスくん…リっくんって呼んだ方がいい?」
「そっちの方があの子呼び慣れてるから、その方がいいかも。ありがとう…!」
ツバキの礼に二人はこくりと返事をした。
 四人は町の四方に散った。携帯なんてものは現代人のくせにナズナは持っていなかったので――カシも持っていないが――リコリスが見つかっても見つからなくても、一時間後の二時に、レストランの前に集合ということに決めておいた。
「リっくーん!」
ナズナは町の南側を探していた。歩いていると、この町が今どんな状態にあるのかよく分かる。全焼した建物は全く見かけないが、どの家も焦がされていた。被害の大きさにばらつきがある。
――学校だ…。
ナズナは足を止めた。その小学校の校庭にはシートが何枚も敷かれて、何人かが集まって思い思いに過ごしていた。電話をしている者、液晶テレビを見ている者、火傷の手当てをしている者…。
――確かツバキさんのお爺さん、リっくんが十歳くらいだって言ってたから小学生だよね。此処に来てたりしないかな…。
じぃっと小学校の外の柵から覗いているナズナの洋服を誰かが引っ張ってきた。ナズナはどきっとする。
「知らないお姉さん、お姉さんの家も焼けちゃったの?」
「あ…、あなた、この小学校の児童?」
ポニーテールの、目のぱっちりした女の子がナズナを見上げていた。こっくりと、少女はナズナの問いに肯定してみせる。
「私の家は…この町には無いの」
「じゃあ、赤い花を見に来たお客さんなのね?」
「うーん…人を探しにきたんだけど…赤い花の咲くこの町を目印に来たから、お客さんなのかもね」
ふうん、と少女は納得した。
「お姉さんの家〝も〟ってことは、あなたの家は火事に遭ったの?」
「うん。ほとんどの部屋が焼けちゃった。でもあたしの部屋はぎりぎり大丈夫だったのよ」
あたしは学校じゃなくて、お庭にシートを敷いて朝ご飯とお昼ご飯食べたんだよ、とナズナに話して聞かせる。学校に来た理由は、友達が来ているかどうか気になったそうだ。
「ねぇ、あなたはリっくんって子知ってる?リコリスくんっていう変わった名前の子」
「リっくん?リっくんはあたしの家の近所だよ」
「そうなの!?」
ナズナは少女の発言に驚いた。でもね、と少女は話し続ける。
「リっくんの家に行ったら誰もいなかったの。リっくんとリっくんのお爺ちゃん何処行っちゃったのかなぁ、リっくんの家、花壇以外は無事なのに…。お姉さんはどうしてリっくん探してるの?」
思い出したように少女は首を傾げた。ナズナは事のいきさつを手短に話す。ツバキからこの町の状況を聞いたこと、手伝いをしたこと、ツバキの祖父からリコリスの不在を聞いたこと……お爺ちゃんは無事なんだね、と少女は安心したように笑った。
「ねぇ、あなたは何処かリっくんが行きそうな場所とかって知ってる?」
この女の子はリっくんと結構仲が良さそうだとナズナは踏んで質問してみる。うーん、と少女は曇り空を見上げた。
「リっくんは学校が好きだから、他の子もいそうだからあたし学校に来たの。公園でもよく遊んでるけど、そこにはいなかったよ」
「そうなんだ。じゃあ私もこの学校を探してみるね」
「うん、でも」
「でも…何?」
少女はちょっと悩んで口を開いた。
「もう一人のリっくんは、野原に行きたがると思う」
「え?リっくんって二人いるの?」
リっくんは一人だけよ、と少女は言った。もう一人のリっくんという言葉にナズナは眉根を寄せる。それってどういう意味?とナズナは少女に訊いてみた。
「あたししか多分知らないんじゃないかなぁ。元気で時々むかつくリっくんの時と、大人っぽくて優しいリっくんの時があるの。大人っぽいリっくんは野原が好きみたい」
「それって…二重人格ってこと?」
分かんない、と少女は答えた。
「野原ってこの近くにあるの?」
「ううん、町の北東の方にあるよ」
――北東なら…カシかツバキさんが探すかなぁ…。
とにかく探そうとナズナは思い、少女に礼を言ってまずは学校の校庭に集まっている人の中に入っていった。勿論その中に『セイサクシャ』を探すことも忘れてはいない。けれどリコリスよりもいる確立は低かった。赤い着物の女の子なんて、居るだけで目立つものだから。
 
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柊葉
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自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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