期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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どうやら追記だけじゃなくて本文も書かないと投稿できないらしいから本文書きますが。
…この人達、本当、どういう展開に持っていけばいいのか、迷う。
なんとなくは決めてますが。
*
「カシ…起きてる?」
「……きみ、早く寝たら?今日は随分動いたんだから」
「そういうカシこそ寝ればいいじゃない」
「俺は寝なくても生きていける性質だから」
「でも疲れたんでしょ、休んだ方がいいよ」
「…、もう暫く窓の外を眺めていたいし」
そっちには窓があるんだっけ、とナズナはふすまに向かって呼びかけた。まあね、とふすまの向こうから返事が返ってくる。
ナズナとカシはイチョウとリコリスの住む家に泊まることになった。一人暮らししているツバキも、今日は実家のこの家に泊まっている。幸いこの家は火事の被害が少なかったのもあり、食材も全て無事だったので普通の間食、そして夕食が振舞われた。こんなに良くしてくれなくても、と断るナズナとカシに、イチョウとツバキは遠慮するなとにこやかに勧めた。食べないんならボクが食べるよ、とカシの前に置かれた味噌汁に手を伸ばそうとしたリコリスをツバキが叱ったり、やいのやいのと賑やかに過ぎていった時間を、家族の団欒というものを二人は懐かしく思っていた。
五人はふすまを閉めることで二部屋に分けられる和室に布団を敷いて寝ていた。和風のこの家にベッドは無い。若干二名はまだ眠りについていないが。
「月って見える?」
「いや、まだ曇ってる。月齢を考えると、今日はお月見日和だったんだけどな」
「団子の代わりにお菓子片手にお月見する予定だったの?」
「俺は団子も好きだよ」
くす、とナズナは隣で寝ているツバキを起こさないように静かに笑った。カシはずっと窓の外を見ていたが、笑い声が聞こえたような気がして後ろのふすまを振り返る。
「きみ、笑った?」
「ううん、気にしないで」
「……?」
カシは再び窓の外を見た。昼間は騒がしかった町も今はとても静かだ。むしろ静かすぎて不気味に思えた。風の音も聞こえない。じっと空を見上げていると、僅かに黄色い幻想的な光が垣間見えた。
「月がちょっと見えてきた」
「え、本当?」
「ほんと。…きみさ、お菓子食べる?」
なんとなくカシはふすまの向こうに提案してみた。
「あ、でもきみ俺のお菓子飽きて」
「いるよ!いるって!あれはちゃんとした食事の時の発言なんだからさ…!」
さっと立ち上がりふすまを開けてナズナはカシに弁解に似た言葉をまくし立てた。言っておいてはっと、ナズナは自分の口に手を当てる。ツバキとイチョウ、リコリスが起きる様子は無い。ナズナは部屋の端を通ってそっとカシの左隣に座り、空を見上げた。
「ちょこっとしか見えないね」
「そうだね。はい、団子」
「夜カシを居間で全然見かけなかったのはこれ作ってたからなの?」
「団子食べたかったから」
皿に乗せられた幾つかの白玉団子をナズナはじっと見つめていた。つぶあんが全ての団子にぺっとりと乗っている。
「蓬色のも作りたかったけれど…蓬の季節じゃないからね」
ナズナはカシからつまようじを受け取って一つぱくついてみた。
「いつも思うんだけど、これも凄く美味しい!」
「うん、いつもありがとう」
このつぶあん甘さ控えめだね、というナズナにカシは太るの嫌だからさと少し微笑んだ。
――実は太るの気にしてたんだ…。
口をもごもご動かしながらナズナはカシの横顔を見ていた。昼間は三つ編みに結われていた白髪は、今は解けている。そんな髪、そして薄墨の装束だけのカシも大分見慣れたなぁ、とナズナは思った。
「そういえば、何で左側だけそんなに髪伸ばしているの?」
「ああ…。願掛けだよ」
カシの言葉にナズナは興味を持った。どんな願を掛けているんだろう?
「でも、どんなことを願っていたのか忘れた。願掛けってことは不思議と覚えているんだけど」
「へぇ…。忘れたのって、『欠ケモノ』の性質のせいだよね。…ねぇ、」
この町で『セイサクシャ』見つけちゃおう。と、ナズナはカシの緑色の目を見て真剣に言った。今は自分と同じく三つ編みの無い彼女を横に見て、ごくりと団子を飲み込んでから無言で空を仰いだ。月はまだらに見える。二人は団子を食べながらお月見を楽しんでいた。そんな様子を、赤い目が薄ら観察していることに二人は気がつかなかった。いつものように夜が更けていく…。
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柊葉
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自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。
※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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