期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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こう、続きからでなくて直接表に貼りつけた方がいいんでしょうかね?
とか疑問を持ちながらそれでも続きの場所に貼ってる私がいますが。
途中ルビの無い意味不明の単語が出てきますが後々の伏線なので
気にしないで下さい…意味明かさないまま終わったらごめんなさい…と先に謝罪orz
とか疑問を持ちながらそれでも続きの場所に貼ってる私がいますが。
途中ルビの無い意味不明の単語が出てきますが後々の伏線なので
気にしないで下さい…意味明かさないまま終わったらごめんなさい…と先に謝罪orz
*
「はあ…」
スズシロは三人召し使いを側において、客間のソファでゆっくりと溜め息をついた。目の前の客に対して失礼な態度だとかには構っていない。いつものスズシロらしさに欠けてしまっているのは、仕事疲れと勝手すぎる物言いでありタイミングの悪い目の前の客人のせいにあった。客人はシルクのソファにどっかり座り長い足を組んでスズシロに対峙している。
「『欠ケモノ』に関する新しい情報はまだ得ていませんから…貴方が今いらしても何も提供できなくてよ、ウルシさん。紅茶とお菓子なら提供できますけれども」
「電話デモ思ッタンダケド、あんた随分機嫌ガ悪ソウダな?」
「そんなことはありませんわ。一つお聞きしたいのですけれど、ウルシさんはもう少し口調を正そうと思ったりはしないのかしら。一応私は貴方よりも年上なのだけれど」
「オレノ年ナンテ教エタ覚エハ無インダケど?ドウセ信ジラレテナイト思ッテイタカラ勝手ニ調ベルンダロウトハ予想シテイタガ、流石『ルリサクラ』、仕事ガ早い」
にぃと口角を吊り上げて笑う客人――ウルシに、『監視ビト』同士同盟を結んだのは間違いだったかしらとスズシロは心情が悟られないように考えた。もっと品のある人が良い。
「勝手に調べたのは申し訳ありませんわ。でも、貴方が信じられる方かどうか私は見極めないといけなくてよ」
「マ、別ニオレハ気ニシテナい。調ベタトコロデ全テガ分カルワケジャナイカラな。ソレニオレモオアイコだ」
ウルシの蒼い左目が、スズシロの僅かに固まった表情を捉えた。
「大丈夫、サッキ全テ分カルワケジャナイッテ言ッタノハ、あんたノトコロヲ調ベタ結果論デモアルカラさ。得タ情報モ、モシモあんたガ裏切ッタラッテコトヲ考エテノ保身用。ソウイウコトダカラゴ安心ヲ、Un lis de la vallée?」
どくん、とスズシロの鼓動が内で大きな音を立てた。召し使い達はただ静かに佇んでいる。スズシロと違って最後の異国語がどういう意味であるのかを理解していないから。保身用?ご安心を?たった今私を脅しておいて何を言うのかしら。……少し間を置いて、スズシロはふふ、と笑った。
「――それならいいですわ。私も貴方のプライベートには干渉致しませんし、貴方には問題も無――」
其処まで言ってスズシロは昨日の晩の荻野の話を思い出した。ン、とウルシは急に黙ったスズシロに妙な顔をする。
「…私、貴方に殺されたりはしませんこと?」
「す、スズシロ様?今なんと?」
思いがけない発言に、思わず召し使いの一人が声を出した。ウルシの事情はスズシロと、荻野を含めた両手で数えられるだけの者しか知らない。アぁ、と何かに合点がいったようにウルシは返事を返した。
「アノ事件ヲ気ニシテイルノか。アレハ自分デ言ウノモナンダガ正当防衛ダッた。自分ノ身ガ危ナクナッタラソノ元ハ断つ。あんたガオレヲ殺ソウトシナケレバソノ心配ハナい。ツーカ、殺シッテ簡単ナコトジャナイシな」
「…貴族のご令嬢は、貴方を殺そうとしたんですの?」
「あんた、ぷらいべーとニハ干渉シナインジャ無カッタノか?」
鋭い、氷のような視線を向けるウルシに、これはすみませんわとスズシロは謝罪した。
「では、私は貴方を信じましょう。…貴方はお互いがお互いをどう捉えているのか面と向かって確認したかったんですわよね?それならもう用は済みましたから、時間がおしているので帰って頂けると助かりましてよ」
「ソレガ不機嫌ノ理由か。ジャ、オ茶ドウも。失礼シタね」
「いいえ。これからもよろしくお願いしますわ、ウルシ・ド・アダンレーゾさん」
アダンレーゾを嫌に強調して。お互い笑みを浮かべる。シャンデリアの明かりがウルシの黒髪――髪の先は赤いメッシュか何かだが――と、長い黒コートをきらきらと照らしていた。
数分後。スズシロともう一人、櫟は早足で庭を闊歩していた。
「本当にすみませんわ。空気の読めない客人がいらしてまして…」
「いえ、そんな!お嬢様が忙しいのは重々承知しておりますから。…しかし、坊ちゃんのいるあの場所は車で向かったとしても相当時間がかかります…明日の早朝になってしまうやも…。坊ちゃんは大丈夫でしょうか…」
「あの子は、食料はまだ十分残っていると思いますわ。だから大丈夫。…そんなに時間がかかるのなら、寝台付きダイニング付きバスルーム付きの大型の車で向かわないといけませんわね。カシさんが一緒にいる可能性もありますからお菓子も持っていった方がいいのかしら…ゼンマイもお菓子は大好きですし」
早足でつらつらと櫟に提案する。そんなお嬢様発言に動じず、櫟はそうですねと返事をして手持ちカバンから携帯電話を取り出した。屋敷の中の者に手短に連絡する。
二人は広大な庭を通り抜けて車庫に辿り着いた。黒い高級車が日の光を反射している。その横に巨大な、瑠璃色のトレーラーハウスがあった。
「スズシロ様、事情は承っております。今すぐ出発なされますか?」
「ちょっと待って下さらない?カシさんとゼンマイ用のお菓子が届いてから――」
「『欠ケモノ』ニ関スル情報、アンタヤッパリ摑ンデソウダな?」
さっき聞いたばかりだと思われる片言が、黒い高級車の陰から聞こえてスズシロははっとした。出てきた人物を見て、やはり同盟なんて組まなければ良かったのかしらと今一度思う。その前髪で隠された右目も、ニタリと左目同様細めているのだろうか。令嬢に傷つけられたというその蒼い目を。
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自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。
※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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