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期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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更新の調子がいいようで実は良くない現実。
何かこう…色々難しい。
早くクライマックスが書きたいのだけれど、どう持っていけばいいのか…。

最終話って、この話の中の伏線もそうだけど、今までの話の中の伏線も拾わないといけないから
忘れっぽい私には難しい作業だわ…。

 
 
 
 
町は昨日よりも幾分落ち着いている感じが見て取れた。
昨日のような緊急事態というわけではないので、三人は一緒に町の中を回っていた。

 
「思うんだけど」

 
この町名物の赤いソフトクリーム(赤というよりピンク色に近い)を舐めながら、同じものを食べている二人にナズナは声をかけた。

 
「火事の酷かった場所って、昨日は分からなかったんだけど赤い花が沢山咲いている場所と一致してる気がするんだよね。
さっき寄ったアイス屋さんは全然被害無いし、近くには赤い花が咲いてないし…。
リっくんの家を取っても、花壇だけが被害を受けていたし」
 
「確かに、それ以外は咲いてないや」

 
ぺろり、とソフトクリームを舐めながらリコリスは納得する。
何でかな、と話しながら三人は公園に辿り着いた。

 
「赤い花が嫌いな誰かが放火した、っていうのを警察は考えているらしいけど」
 
「ふうん……え、警察?」

 
ぴたりとナズナは立ち止まり、カシの顔を見た。
まだ話してなかったけど、とカシは話し出す。

 
「この子を探しているときに警察官を見かけて」
 
「あぁ…、そういえば今日もちらほら見かけたね」
 
「うん。それで……、
事情を訊いてみたらこれは人の仕業で…自然発火というのも変だからそれは予想がついていたけど、
昨日の段階では黒髪黒コートの男を放火犯の疑いがあるとして、ある警察官は探していた。
一日経った今は捜査の状況はよく分からないけど…俺としては犯人が少し気になる。
ただの好奇心だけどね」

 
ボクも気になる、とリコリスが柔らかいピンク色のクリームの口髭を作ったまま賛同した。
真面目な顔で答えていたのでナズナは笑ってしまいそうになったが、とにかく抑えてリコリスにクリームのことを教えてあげる。

 
「私も気にならないことはないけど、町全体を焼いたような危険な放火犯だからあまり関わりたくないかも。
それから、カシ、ちょっと」

 
ちょんとカシの袖を引っ張ってリコリスに聞こえないようにナズナは小さな声で話した。

 
「事情を訊いたって嘘だよね」
 
「まあね」
 
「~~、なんかね、そう当たり前みたいな顔しないでよ!
人の想いが視えない元の人間に戻ったときにコミュニケーション能力落ちてたら困るでしょ?」
 
「きみってさ、時々変だよね」

 
変って、とほんの少し怒るナズナを無視してカシは公園をぐるりと見渡した。
小学校低学年ぐらいの男の子達が元気に追いかけっこをしている他には誰もいない。

 
――あの声の主は、まだこの町にいるんだろうか。

 
昨日の不思議な声を思い出してか、カシは腕を組んで考えていた。
カシと、それからリコリスはもうソフトクリームを食べ終えたらしい。
風で微かになびいている白い三つ編みをじっと、無意識のうちに見つめていたリコリスは最後のコーンを齧ったその人に声をかけた。

 
「ナズナ姉ちゃん」
 
「ん、リっくん何?」

 
きょとんとするナズナの服の裾を引っ張ってリコリスはぱたぱた歩いていった。

 
「え、ちょっと、リっくん何処行くの?」
 
「カシ兄ちゃーん、ちょこっとだけナズナ姉ちゃんと話していい?」

 
断る理由が無いのでカシはいいよと返事を返した。
リコリスはにっと笑い返して、公園の入り口の所で足を止めてナズナの服からも手を離した。

 
「話って何かな?」

 
リコリスの目線に合わせてナズナは少し屈んで訊いてみた。

 
「ナズナ姉ちゃんは知っているんでしょ?」
 
「……え?」

 
何が、と問う前にリコリスは即座に答えた。

 
「リコリスの中に別の誰かがいること」
 
「も…もしかして、昨日の女の子が言ってた変なリっくんのこと?」

 
リコリスはにっこり笑って、初めましてと握手の右手を差し出した。
どうやら今が、その変なリっくんと対峙しているらしいと悟る。
ナズナはそっとリコリスの手に触れると、まず自分の手の感覚を疑った。

 
「…!?リっくん、手ぇ冷たすぎない!?」
 
「あー…ソフトクリームで余計冷たくなっちゃったのかな?
これ以上温度が下がらないように努力してるんだけど」

 
握手を交わしてひらりと自分の右手を眺めているリコリスに、ナズナは疑問をぶつける。

 
「これ以上って、あなたの体温はどうなっているの?」

 
「リっくん」が無意識のうちに「あなた」に変換されたのにはナズナは気付かなかった。
こっそりと誰かは笑う。

 
――割とこの子、鋭いのかしら。

 
「昨日火事が起こるまでは至って普通だったけれど、もうリコリスの体温が上がることは無いんだ…。
煙を吸いすぎてリコリスは死んじゃったんだから」

 
思わぬ発言にナズナは声を失った。
発言もそうだが、リコリスが今まで見せたこともないような暗い表情をしていたのにも理由がある。

 
「信じなくていいよ、嘘みたいな話だからね。
どうして死んだのにボクは動いているのか、常識で考えると可笑しい話だし」
 
「嘘みたいな話が現実でここ一週間起こっているんだけど……」

 
ふうん、とリコリスは興味ありげに赤い目を輝かせた。
意味ありげ、の方が正しかったかもしれない。

 
「今日ナズナ姉ちゃん達について来たのは、その女の子を探してあげるのもそうだけど、ナズナ姉ちゃんにボクのフォローをお願いしたいからなんだ」
 
「え、待って、フォローって…どういうこと?」
 
「リコリスを演じるのは思ったよりも大変でね。
お爺やツバキ姉ちゃんにバレるのは時間の問題かもしれないんだけど、まだ、ある時間までバレるわけにはいかないから。
それはカシ兄ちゃんも然り」

 
だからお願い、と頼むリコリスにナズナはどう返事していいのか分からなかった。

 
「どうして私に…?」
 
「〝ボク〟を知る人はオミだけだったんだけど、そのオミがナズナ姉ちゃんに〝ボク〟のことを話しちゃったからなのと、個人的な興味」

 
十歳の男の子に個人的な興味と言われたナズナは少し複雑な気持ちになった。

 
「それで、個人的な興味になる話なんだけどね。
ナズナ姉ちゃんとカシ兄ちゃんって好き合ってるの?」
 
「なんでそんな話…っ!?」

 
いきなり大きな声を出したナズナに、カシが振り返った。
振り返られたナズナは赤くなって元の声でひそひそとリコリスに話しかける。

 
「一緒に行動してはいるけどね、違うよ、うん。
リっくんぐらいの年頃になるとそういうの気になってくる気持ちは分からなくもないけれど」
 
「じゃあ、仲がいいだけなの?昨日夜空を見ながら二人でお団子食べていたのを見たんだけど」
 
「起きてたの!?
お、お団子はカシお菓子作るの好きだからね、リっくんだって今朝カシが新しく作っておいたお団子食べたでしょ…?」

 
リコリスはナズナが何故慌てているのかよく分からなかった。
呼び名も元に戻っている。

 
「良かった」
 
「……?」

 
ふっと静かに笑ったリコリスに何が、と声をかけようとしたその時、ナズナはまた心拍数を上げることになる。

 
「何かあった?」
 
「カシっ、い、いつの間にこっちに!?」
 
「そんなに驚かれることでも無いと思うんだけど。
それより、此処には『セイサクシャ』はいないみたいだから、別の場所に行かないか?」
 
「あ、じゃあデパートとか行ってみる?案内してやるよ」

 
リコリスの役者っぷりにナズナは内心驚いて、それでも、ちらりとカシを見やった。
カシにはばれてしまう気がしたからだ。
必要とする時以外には能力は使っていないようだが、もしもカシがリコリスの想いを覗いたら。
二人はリコリスの提案によって歩き出した。

 
「ナズナ姉ちゃんにカシ兄ちゃん」

 
ひた、と止まったリコリスに二人も歩くのを止めた。

 
「二人は、赤い花って好き?」

 
急な質問に二人は顔を見合わせて、とりあえずナズナから答えることにした。

 
「うん、好きな方だよ。今日この町を歩いてみて驚いたもの!」
 
「血を連想させるけど、嫌いじゃないね」
 
「なっ…!怖いこと言わないでよ」

 
ぞっとしたナズナに、この町のように赤い花ばかり密集していたらそう見えなくもないだろう、とカシは説明した。

 
「彼岸花とか、神秘的で好きだな」
 
「あー、私もそれには同感する」

 
――!

 
へえ、とリコリスは妙に嬉しそうに言った。
三人は再び歩き出す。
道の所々に生えている赤い花は静かな風にそっと揺れていた。
灰の上に咲くそれは、まるで不死鳥の誕生のようで美しくもあり、ほんの少し不気味かもしれない。
 
 
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柊葉
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女性
自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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