期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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文章も内容もぐだぐだでしたけれど、ね。
なんだか一人でじいんとしている私がいます…だって長編小説完結したの初めてな気がするんですもの。
まあ、「仮死」って小分けになっていますから長編というよか短編の集まりなのかなっとも思いますが。
でも長編でしょうね。うん。
それではどうぞ。
なんだか一人でじいんとしている私がいます…だって長編小説完結したの初めてな気がするんですもの。
まあ、「仮死」って小分けになっていますから長編というよか短編の集まりなのかなっとも思いますが。
でも長編でしょうね。うん。
それではどうぞ。
*
ナズナの実家、そしてセリハの住む家の前、ポストの近くでカシは二人を待っていた。
それも、旅の時に着ていたような黒装束ではなく――色は同じ黒でも、カジュアルスーツを着ている。
傍らには旅のお供だった紅いトランク。
それも、旅の時に着ていたような黒装束ではなく――色は同じ黒でも、カジュアルスーツを着ている。
傍らには旅のお供だった紅いトランク。
――慣れない。
落ち着きたくて塀に背中を預けたかったが、せっかくのスーツが汚れてしまうのは頂けない。
慣れない理由は着衣だけでなく、たまに通る人が一瞥をくれることも入った。
線の無いシンプルな黒スーツに、白髪の長い三つ編みは余計目立つ。
人の目に映る自分を見て、カシは改めて存在感が戻ってきたのだと感じた。
慣れない理由は着衣だけでなく、たまに通る人が一瞥をくれることも入った。
線の無いシンプルな黒スーツに、白髪の長い三つ編みは余計目立つ。
人の目に映る自分を見て、カシは改めて存在感が戻ってきたのだと感じた。
どうにも落ち着かなくて、カシは紅いトランクの外側のポケットから音叉を取り出した。
銀色の棒に自分の顔が細長く映りこんでいる。
映ったカシの瞳は明るい茶色ではなく、元の緑色であった。
銀色の棒に自分の顔が細長く映りこんでいる。
映ったカシの瞳は明るい茶色ではなく、元の緑色であった。
――やっぱり緑なんだよね。
ヒガンの元から帰ってきたその日、ナズナ達に指摘されて鏡を見たときには明るい茶色の瞳だった。
けれど翌日には緑色の目に戻っていたのだ。
何があったかは分からないが、ヒガンが関係しているのは間違いない。
ビロウに、不老以外の自身の力を意図せず分けてしまったり、『欠ケモノ』が自分と接触したときに持っていた持ち物にまで力を及ばせてしまったり、何かと不完全な彼女のことだ。
緑目になっても催眠術はもう使えない。
けれど、またヒガンに会うことがあったなら、この目の色についてカシは聞いてみようと考えていた。
けれど翌日には緑色の目に戻っていたのだ。
何があったかは分からないが、ヒガンが関係しているのは間違いない。
ビロウに、不老以外の自身の力を意図せず分けてしまったり、『欠ケモノ』が自分と接触したときに持っていた持ち物にまで力を及ばせてしまったり、何かと不完全な彼女のことだ。
緑目になっても催眠術はもう使えない。
けれど、またヒガンに会うことがあったなら、この目の色についてカシは聞いてみようと考えていた。
「もう、会えない気はするけどね……」
ぽつりと呟いて、カシはなんとなく音叉を傾けて台の裏に刻まれた文字――記名を見る。
「誰に会えない気がするの?」
突然掛かった声にカシが横を振り向くと、灰色の段になったワンピースの上に淡いピンク色のカーディガンを羽織ったナズナと、ブレザーのセリハがいた。
ナズナの問いに、カシは素直に答えた。
ナズナの問いに、カシは素直に答えた。
「ヒガンだよ」
「え……ヒガン?」
「ああ。
目の色について、それからもっと色んなことについて聞きたかったけれど……なんとなくもう会えないだろうなって」
目の色について、それからもっと色んなことについて聞きたかったけれど……なんとなくもう会えないだろうなって」
夢を見てね、とカシは二人に続けた。
「小さなホールで俺によく似た……俺だったような気もするけど、その人がオーケストラの指揮を振っていた夢でね。
なんでそんな夢を見たのかは分からない。
観客はヒガンだけで、終わった後に笑顔で拍手してくれたんだ。
拍手を止めた後に彼女は色々感想を言ってくれて、最後にありがとう、さようならって言って出て行ったんだ。
その時の彼女が……もうそのホールに、自分の演奏に二度と来てくれない気がしたんだよね。
ステージを振り返らないで、彼女はまっすぐ出て行った」
なんでそんな夢を見たのかは分からない。
観客はヒガンだけで、終わった後に笑顔で拍手してくれたんだ。
拍手を止めた後に彼女は色々感想を言ってくれて、最後にありがとう、さようならって言って出て行ったんだ。
その時の彼女が……もうそのホールに、自分の演奏に二度と来てくれない気がしたんだよね。
ステージを振り返らないで、彼女はまっすぐ出て行った」
「「へぇ……」」
被った嘆息に、姉と弟はむっと顔を見合わせる。
二人がやっと家から出てきてくれたところで、カシはトランクの持ち手を握った。
二人がやっと家から出てきてくれたところで、カシはトランクの持ち手を握った。
「じゃ、屋敷まで歩こうか」
「「なっ…!?」」
「冗談」
また君達の声がそろうかなーと思って。
からかわれた二人はまたむっとして、けれどナズナの顔はすぐに柔らかいものになる。
からかわれた二人はまたむっとして、けれどナズナの顔はすぐに柔らかいものになる。
「また、ついていくよ」
二人より先に歩き始めたカシは、その声に振り返った。
「えっと、カシがまた旅に出て、私が暇で、カシが私のことを邪魔だと思わなければね?」
条件を重ねて言うナズナは、まっすぐカシの目を見ていた。
その横でセリハは眼鏡をかけ直し、止まっている二人に構わず歩き出す。
その横でセリハは眼鏡をかけ直し、止まっている二人に構わず歩き出す。
「……」
一秒足らずの時間の後、カシは優しく笑んだ。
「また、一緒に行こう。
……お菓子も一人より二人で食べた方が美味しいしね」
……お菓子も一人より二人で食べた方が美味しいしね」
何それ、とナズナは突っ込みながらも、その返事が嬉しかったようで満面の笑みになる。
キウともまた旅ができたらね、と二人は話した。
そこでやっとナズナは、セリハが二人よりも距離をあけてしまっていることに気付く。
キウともまた旅ができたらね、と二人は話した。
そこでやっとナズナは、セリハが二人よりも距離をあけてしまっていることに気付く。
「あ、セリハーっ、ハッカちゃんと一緒にいけないからむくれてるの?」
「ハっ……!?」
断じて違うっ! と、近所迷惑になりかねない声でセリハは反論した。
「……、オレと姉ちゃんが遅かったのが原因だろうけど、ちょっと急がないと、バス乗り遅れるよ」
先の反論が恥ずかしかったのか、下の方を向いてセリハは二人に呼びかけた。
ナズナとカシは少し焦って、セリハに並ぶ。
カシが戻ってきてから右側に結い直した三つ編みと、白髪の長い三つ編みがそろって揺れた。
ナズナとカシは少し焦って、セリハに並ぶ。
カシが戻ってきてから右側に結い直した三つ編みと、白髪の長い三つ編みがそろって揺れた。
過去の記憶は戻らなかった。
でも、これからの記憶は積もり続ける。
今と未来に期待しようと思う。
勿論期待だけには留まらない。
歩き続ける。
また、時に立ち止まって戻ってしまうこともあるかもしれない。
それでも再び歩き始められれば、それでいい。
そして、確かにあった過去に対峙できるときが来たならば――そんな奇跡に出会えたならば。
それが例え残酷なものだったとしても、自分のものに変わりは無いのだ。
怖くても、どうなってしまおうとも、大きく手を広げて構えよう。
でも、これからの記憶は積もり続ける。
今と未来に期待しようと思う。
勿論期待だけには留まらない。
歩き続ける。
また、時に立ち止まって戻ってしまうこともあるかもしれない。
それでも再び歩き始められれば、それでいい。
そして、確かにあった過去に対峙できるときが来たならば――そんな奇跡に出会えたならば。
それが例え残酷なものだったとしても、自分のものに変わりは無いのだ。
怖くても、どうなってしまおうとも、大きく手を広げて構えよう。
大丈夫。
支えてくれる人もいるのだから。
支えてくれる人もいるのだから。
*
とある時代、とある国の音楽家は言った。
『彼女は、彼は、あの子は在りし日の自分自身から進めたのだろうか。
まだとらわれてはいやしないだろうか。
ピアノの鍵盤を一音押さえたところで、音は次第に消えていく。
隣のキーを鳴らして、離れたところにも飛んでみて、二音一緒に押してみる。
一音では生まれない可能性。
見えない檻を開ける鍵は、必ずあなたの手の届くところに落ちている。
――Y.Albino』
まだとらわれてはいやしないだろうか。
ピアノの鍵盤を一音押さえたところで、音は次第に消えていく。
隣のキーを鳴らして、離れたところにも飛んでみて、二音一緒に押してみる。
一音では生まれない可能性。
見えない檻を開ける鍵は、必ずあなたの手の届くところに落ちている。
――Y.Albino』
そして彼は、時を超え、空気を伝わり、広く、未来の子らにも自分の言葉が響いていったらと願う。
肉体は死んでもその意思は永遠に。
肉体は死んでもその意思は永遠に。
そして、彼らの物語も永遠に。
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某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。
※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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