忍者ブログ
期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
[113]  [111]  [110]  [109]  [108]  [107]  [106]  [105]  [104]  [103]  [102
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 

 
 
 
 
忌まわしい赤を中和してくれる防御壁が無くなった。
世界があらわになり、赤い野原、目の前の赤い着物を纏った女の子が、奥底に埋めた過去を引っ掻いた。

 
『なんで貴方は私を見てくれないの…?』

 
いつも彼はある女性を忘れられないでいた。
あの日を境に彼女は現世から消えた。
消されそうだったから、消した。
もとい殺してしまった。
最期の一時は鮮明に思い出すことができる。
捨てられ、荒れ果てた小麦畑。
二羽のメジロ。
微かにそよいでくる潮の香り。
人の全く訪れない、それ故心の安らぐ土地。
彼は人が嫌いだったから、その場所が好きだった。

 
『視界の半分を失ったのにどうして…?』

 
夕暮れに狂う赤い貴族服を着た彼女。

 
『恋人なのに、どうしてどうしてどうして私を理解してくれないのよ――!!』

 
右目が最後に見た景色は、橙の煌きと、その後は真っ赤に潰れてシャットアウト。
神経を何本もぶち抜かれたような激痛。
死ぬかもしれないそんな痛みと赤色は彼の中で結ばれた。
その後に彼は、生きたいという本能のままに動いた。

 
体内で何かが暴れている。
こんな風になってしまったのは彼女が『欠ケモノ』になってしまったからか。
いつから彼女は『欠ケモノ』になったのか。
能力が自分に効かないから余計狂ってしまったのか。
そもそも彼女は何を願っていたのか。
自分はどうして『監視ビト』なんかになり得ているのか。
いつの間にか受け入れている。
そんな事態が憎い。
運命が憎い。
全ての鍵である『セイサクシャ』にあいまみえたのに何もできない。
憎い。
そして、どうしようもない精神状態を抑え付けることのできない自分が、一番憎い。

 
――あいつナンカニ、オレト何処カ似タあいつナンカニ、出会ワナケレバヨカッた。
最初カラ大嫌イダト、失セロダノト突キ放シテイレバヨカッた。
 
 
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
  <<   HOME   >>  
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
[12/31 夏草]
[12/05 夏草]
[05/17 夏草]
[10/20 白鼠]
[08/16 碧結改め蜜丸]
プロフィール
HN:
柊葉
性別:
女性
自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。

※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
フリーエリア
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ・[PR]