期間限定オフの小説最終話用ブログ(2008年7月より運営)
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あら、こんにちは。
あなた、私のことが見えるんですね。不思議なこともあるものね…。
私は2年ぐらい人と話も、会ってもいません。
だからあなたのような人が現れてくれて、ちょっと嬉しい。
ねえ、暇なら私の話を聞いてくれないかしら?
私はね、生まれも育ちもいいところのお嬢様だったの。
古くから由緒正しい家柄でね、すごくお金持ちで、パパとママは欲しい物はなんだってくれた。
愛以外はね。
パパとママは私に対していつもとても優しかったわ。
でもね、私にとって物足りないの。
一人ぼっちの時間が長かったせいなのか。
幼い頃に病気をつきっきりで看病してくれたような、あの時の感覚が忘れられないせいなのか。
何が原因か分からないけれど…愛が足りないの。もっと、もっと!
貴族の娘として人との交流は沢山あった。
何人かの人は私に愛を示してくれたこともある。
仮初めの愛をね。
名誉とお金が欲しいのが見え見えだったもの。
ある日私は彼に出会った。
彼は人を寄せ付けない雰囲気を纏っていたわ。愛想も悪そうだった。
なぜかは分からないけれど私はそんな彼に興味を持った。
吸い寄せられたとでもいうのかしら。
同じ一人ぼっち同士、惹かれあったんだと思うの。
私の手と彼の手が触れる。
他の人には感じないものを彼に感じたわ。
その数日後、彼が許婚として家に招かれた。
彼は有名な会社の御曹司だったらしい。
運命ってあるのね。
彼は寡黙だった。
でも、私をいつも無言で受け入れてくれる。
そっけなくされることもあるし無視されたこともあるけど。
手を繋いだら握り返してくれるし、抱きしめたら抱きしめかえてくれるの。
最初はそれで満足だった。
最初は通じ合っていたはずだった。
彼の目に私が映っていないことに気がついた。
鳥、空、木、海、人、人、人、人。
そういえば彼の方から愛を提供してくれたことってあったかしら?
ねえ、いつから私を見ていないの? 避けるの? 他の人を見るの?
私がいれば十分でしょう?
分からない。分からないわ。最初はそんなのじゃなかったのに。
ねえ、いつから変わったの?
ねえ、足りないよ。最初から感じていたことだけど。
愛を。愛を愛を愛を愛を!
私に愛をちょうだいよ!!
…叫んでしまってごめんなさい、あなたは彼じゃないものね。
私はある時彼を永遠に私だけのものにしようとしたの。
そうすれば彼の愛は私にしかいかない。
でも、失敗しちゃった。
私は2年間誰とも会っていないし彼とも今後永遠に会わない。
寂しいけど、嬉しいこともあるの。
あの日失敗はしたけど、ある意味成功したみたいだから。
彼は私を一生忘れない。
私は彼の『右目』の中で永遠に生き続けるのだから。
*
何処かで狂った女の話。
彼女の名前、マリ・ファナリエッタは小麦畑の見える丘にある墓石に刻み込まれていた。
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柊葉
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自己紹介:
某高校で文芸部に所属していました自称駄文クリエイター。今さっき命名(←)。オリキャラ好きーです。高校在学中に執筆していた「仮死にとらわれ」という作品の最終話をワケあって連載します、ネットサーフィンで辿り着いた方で1話から読みたいって方がいれば声かけて下さいませ。時々詩や日記や作品解説も。
※個人誌「仮死にとらわれ」は2008年度の作品です、年度の表記を怠ったのを今更ながら後悔;
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